WordPressテーマを選ぶとき、カスタマイザーを開いたとき、プラグインの設定画面を見たとき。
「選択肢が多すぎて、何を選べばいいかわからない」
そう感じたことはありませんか?
あるいは、テーマの設定をいじっているうちに気づいたら1時間が過ぎていて、
肝心の記事は1文字も書けていなかった….
そんな経験はないでしょうか。
実はこの現象、心理学で証明されています。
今回は「ジャムの法則」という心理法則を切り口に、WordPressテーマの設計について考えてみたいと思います。
24種類より6種類の方が売れた。ジャムの法則とは

2000年、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授がスーパーマーケットで興味深い実験を行いました。
ジャムの試食コーナーを2パターン用意し、消費者の行動を観察したのです。
ひとつは24種類のジャムを並べたコーナー。もうひとつは6種類だけを並べたコーナーです。
結果は衝撃的でした。
24種類のコーナーでは、立ち寄った人のうちわずか3%しか購入に至りませんでした。
一方、6種類のコーナーでは約30%が購入したのです。
購入率に約10倍の差が生まれました。
24種類を前にした消費者は、試食はするものの「どれにしよう」と迷い続け、最終的に「今日はやめておこう」と立ち去ったのです。
選択肢が多いほど人は「迷う」のではなく、「選ぶことをやめる」。
これが「ジャムの法則」と呼ばれる心理現象です。
決定回避の法則。選んだ後も満足できなくなる

ジャムの法則と深く関連する心理現象がもうひとつあります。
「決定回避の法則」です。
選択肢が多すぎると、人間の心理に3つの悪影響が起きることがわかっています。
ひとつ目は、決断を先送りにしてしまうこと。
「もう少し調べてから決めよう」が永遠に続きます。
ふたつ目は、判断の質が下がること。
情報過多の中で疲弊し、結果的に最善とは言えない選択をしてしまいます。
そして三つ目が最も厄介です。
選んだ後も満足できなくなるのです。
「もっと良い選択があったのでは」
という後悔が、ずっと頭の隅に残り続けます。
WordPressのテーマ選びでも、まったく同じことが起きていないでしょうか。
何十種類ものテーマを比較して、ようやく決めたのに、使い始めてすぐ
「やっぱり別のテーマの方がよかったかも」
と感じてしまう。
それは、テーマの質の問題ではなく、選択肢の多さが引き起こす心理的な現象なのです。
WordPressテーマの設定画面で起きていること

ジャムの法則はテーマ選びだけの話ではありません。
テーマを選んだ後、実際に使い始めてからも同じ罠が待っています。
カスタマイザーを開いてみてください。
カラーピッカーでは1,600万色以上の中から「ぴったりの色」を選ぶよう求められます。
フォントの選択肢は数十種類。レイアウトの組み合わせは無限にあります。
「自由度が高い」と聞くと魅力的に感じるかもしれません。
しかし実態はどうでしょうか。
多くの人がカスタマイザーの中で迷子になります。
「この色で本当にいいのか」「このフォントで合っているのか」
と悩み続け、気づけば何時間も設定をいじっている。
プラグインの設定画面も同様です。
高機能なプラグインほど設定項目が多く、何をONにして何をOFFにすべきか判断できない。
結局、よくわからないまま使い続けることになります。
そして最も本質的な問題は、その間に1文字も記事が書けていないということです。
設定に費やした時間は、コンテンツを生み出す時間を確実に奪っています。
「機能が多い=良いテーマ」という思い込み

WordPressテーマを紹介するサイトを見ると、
「機能が豊富!」「カスタマイズ自在!」
といった言葉が並んでいます。
まるで機能の多さがテーマの価値であるかのように語られています。
確かに、用途によっては多機能なテーマが必要な場合もあります。
企業の公式サイトや複雑なECサイトなど、高度なカスタマイズが求められる場面はあるでしょう。
しかし、ブログを書くことが目的の人にとって、本当に100以上の設定項目は必要でしょうか。
記事を書いて、読者に届けて、発信を続けること。
ブログの本質はそこにあるはずです。
にもかかわらず、私たちはテーマの設定に何時間も費やし、プラグインの比較に何日もかけ、デザインの微調整を繰り返しています。
それは「良いブログを作るため」ではなく、ジャムの法則が示す通り「多すぎる選択肢に支配されている」だけかもしれません。
Kuuが選択肢を「削った」理由

Kuuテーマを作るとき、私はあえて選択肢を削りました。
カラーテーマは3つだけ。ネイビー、ベージュ、ダークモード。
1,600万色のカラーピッカーは置きませんでした。
3つの中から選ぶだけなので、迷う時間は数秒です。
カスタマイザーの設定項目も必要最小限に厳選しました。
「あったら便利かもしれない」という機能は、ほとんどの場合「なくても困らない」機能です。
エディターの装飾も同様です。
下線、蛍光ペン、マーカーの3タイプを3色で用意しました。
シンプルですが、ブログ記事を書くには十分な表現力があります。
SEO設定、OGP設定、目次、パンくずリストはテーマに標準搭載しました。
これによって、プラグインを探して、比較して、インストールして、設定して…
という一連の作業をまるごと省くことができます。
テーマ選びに悩む時間。
WordPressの初期設定に悩む時間。
テーマのカスタマイズに悩む時間。
エディターの装飾に悩む時間。
プラグインの選定と設定に悩む時間…
これらすべてを、記事を書く時間に変えたい。
それがKuuの設計思想です。
迷わない環境が、最高のコンテンツを生む

ジャムの法則が教えてくれるのは、「選択肢を減らすことは制限ではない」ということです。
むしろ、選択肢を減らすことは解放です。
迷う時間から解放される。
設定疲れから解放される。
「これでいいのか」という不安から解放される…
そして、その解放された時間とエネルギーは、すべてコンテンツ作りに注ぎ込むことができます。
24種類のジャムの前で立ちすくむのか。
6種類の中からさっと選んで、次の行動に移るのか。
ブログにおいて「次の行動」とは、記事を書くことです。
それ以外の何物でもありません。
「迷わない環境こそ、最高のコンテンツを生む。」
私はそう信じて、Kuuを作りました。
参考文献
気になる内容はぜひリンク先もご覧ください。
🔗選択肢が多すぎると選べなくなる「ジャムの法則」とは(Marketing101)コロンビア大学シーナ・アイエンガー教授の実験を詳しく解説した記事です。24種類と6種類のジャムで購入率に約10倍の差が出た実験結果を、マーケティング視点でわかりやすく紹介しています。
https://marketing101.jp/jam/🔗ジャムの法則と決定回避の法則のマーケティング活用事例(仕事に役立つ心理学)アイエンガー教授が「選択肢は7±2が最適」と説いていることや、選択肢が増えると購入率だけでなく満足度も低下するという研究結果を紹介しています。Kuuがカラーテーマを3つに絞った設計判断の裏付けとなる記事です。
https://asu-yoku-laboratory.com/jam-study🔗決定回避の法則から学ぶ営業戦略(CHINTAI JOURNAL)プリンストン大学のエルダー・シャフィール博士が提唱した「決定回避の法則」を、ビジネスの現場に応用する視点で解説しています。選択肢が多すぎると決断そのものを避けてしまうメカニズムが、WordPressの設定画面でも同様に起きていることを裏付けています。
https://journal.chintai.net/salesman-bible/decision-avoidance/🔗ジャムの法則と対策を世界一分かりやすく解説(世界一分かりやすいマーケ塾)選択肢が多いと購入率だけでなく選んだ後の満足度まで低下するという実験データを紹介。12種類から選んだ人の方が「後悔」「選びなおしたい」気持ちが強くなったという結果が、テーマ選びで「やっぱり別のテーマにすればよかった」と感じる心理と一致します。
https://markejuku.com/lawofjam/🔗選択肢が多すぎると脳が疲弊するメカニズムとは(仕組み化ブログ)選択肢が増えると脳のエネルギーを想像以上に消費し、最終的に意思決定をしなくなるメカニズムを解説。WordPress設定での「とりあえずデフォルトのまま使い続ける」という行動の心理的背景がわかります。
https://libru-blog.com/strategy/psychology-prospect/🔗WordPressのユーザー体験にありがちな9つの問題と解決方法(Kinsta)WordPressホスティング大手Kinstaが、プラグインの過剰導入や複雑な設定がUXを悪化させる実態を解説しています。Kuuの「シンプル設計」の正当性を、UXの専門的な観点から裏付ける記事です。
https://kinsta.com/jp/blog/wordpress-user-experience/🔗How Many WordPress Plugins Are Too Many?(Jetpack / WordPress.com)WordPress公式プラグインJetpackのチームが、プラグインの数と品質の関係を解説。20個を超えたら監査すべきという目安や、1つの低品質プラグインが20個の良質プラグインより害を及ぼすという指摘は、Kuuがプラグイン依存を減らす設計にした理由と直結しています。
https://jetpack.com/resources/how-many-wordpress-plugins-are-too-many/🔗These WordPress Plugins Make Your Website Slow(Servebolt)WordPressホスティング企業Serveboltが、サイトを遅くする具体的なプラグインカテゴリーを実名で紹介。「何でもできるスイスアーミーナイフ型プラグインより、小さな専用プラグインの方が良い」という提言は、Kuuの設計思想そのものです。
https://servebolt.com/articles/these-plugins-slow-down-your-wordpress/🔗The Drawbacks of WordPress — パフォーマンス低下、肥大化、セキュリティ脆弱性の実態(Afteractive)WordPressサイトのパフォーマンス問題の約80%がプラグイン関連であるというデータや、平均25個を超えるとサイト速度とセキュリティに影響が出るという分析を紹介。プラグイン依存がもたらすリスクを包括的にまとめた記事です。
https://www.afteractive.com/blog/the-drawbacks-of-wordpress🔗選択の科学 — シーナ・アイエンガー著(Amazon)ジャムの法則を提唱したアイエンガー教授の代表的著書。選択肢と人間の心理に関する膨大な研究をまとめた一冊で、この記事の理論的基盤となっています。TEDでの講演も700万回以上再生されています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4167901552

